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写真に基づく佐賀県からのヤリマンボウの確かな記録

澤井悦郎

Abstract / Introduction / Summary:

ヤリマンボウMasturus lanceolatus (Liénard, 1840)はフグ目マンボウ科Molidaeヤリマンボウ属Masturusに属し,世界中の温帯・熱帯海域に広く分布する大型魚類である(波戸岡・萩原,2013;松浦,2017;澤井,2017;Sawai et al., 2020).本種は外観が似ているマンボウ属Molaとよく混同されるが,下顎が上顎よりわずかに前方に突出すること,舵鰭(尾鰭に見える部位)の中央よりやや背側が後方に突出すること,マンボウ属より体型が卵形であることなどの特徴から形態的に識別可能である(波戸岡・萩原,2013;松浦,2017;澤井,2017; Sawai et al., 2020).

筆者が調べた限りでは,実際に計測されたヤリマンボウの最大個体は全長10 feet (304.8 cm)であるが(Sawai et al., 2020),日本近海における本種の最大個体は川上・一澤(2012)が報告した全長約220 cmの個体である.日本近海における本種は青森県(澤井,2020)から沖縄県(例えば,澤井・峯水,2022)まで散発的な記録があるが,マンボウMola mola (Linnaeus, 1758)と比較して漁獲は稀である(松浦,2017). このたび,2020年10月と2021年11月に佐賀県唐津市の虹の松原周辺の砂浜にヤリマンボウが打ち上げられていた情報が得られ,筆者が調べた限りでは,佐賀県からの本種の記録が見つからなかったため,ここに確かな記録として報告する.