Abstract / Introduction / Summary:
南北に約 600 km ある広大な県土を持つ鹿児島 県は,九州島の本土と約 30 の離島で形成されて いる.このため,その気候は温帯から亜熱帯まで 属しており,特に離島では亜熱帯気候に属する 島々が多く,多種多様な動植物に恵まれている. なかでも,鹿児島県内に陸産貝類は約 400 種類生 息していると言われている(君村,2017).陸産 貝類の特性として,極めて低い移動分散能力や安 定した環境でなければ恒常的な繁殖ができないこ とに起因する,分布の不連続性が挙げられる.そ のため,各地域での地域的な種分化が起こりやす い.また,環境の影響を受けやすい側面を持つた め,環境指標動物としても広く扱われている. 鹿児島県の陸産貝類についての研究は,上記 の理由から,離島に生息する種や分布を調査した ものが多く,鹿児島県本土,特に市街地を舞台と した陸産貝類の分布に関する研究については,詳 しい研究がされていない.行田(2003)によると, 神社境内は森林が保護されていると記載されてお り,実際に市街地の神社でも,良好な自然環境が 保全されている地域が多い.そこで,本研究では 鹿児島県鹿児島市内の神社に焦点を当て,陸産貝 類が生息していると考えられる自然林ができるだ け残った神社を 12 地点選択し,その分布につい て調査を行った.調査結果については,野村・シ ンプソン指数から各地点間の類似度を算出し,比 較することで各地点の類似点や相違点を明かにす ることを目的とした.また,鹿児島県レッドデー タブック 2016 の絶滅・消絶滅危惧評価をもとに, 採取された種の希少性に対して独自に点数を設け (鮒田ほか,2015),各採取地点の希少性の評価, 及び比較を行った.