Abstract / Introduction / Summary:
ヘ ナ タ リ Cerithidea (Cerithideopsilla) cingulate (Gmelin, 1791) は房総半島・北長門海岸から南西 諸島,朝鮮半島,中国大陸,インド・西太平洋に 分布し,内湾部の干潟や河口汽水域の干潟,低潮 帯表層に生息している.ヘナタリの生態に関して はいくつかの研究例がある.フトヘナタリ,ウミ ニ ナ, ホ ソ ウ ミ ニ ナ Batillaria cumingi (Crosse, 1862),ヘナタリの 4 種について対塩性,低湿選 好性,干出選好性の観点からの分布について山本・ 和田(1999)によって詳しい考察が行われた. Wells (1983) は,香港のマングローブ林に生息す るウミニナ科・フトヘナタリ科の 6 種フトヘナタ リ,カワアイ,ヘナタリ,ウミニナ,イボウミニ ナ Batillaria zonalis (Bruguiere, 1792),マドモチウ ミニナ Terebralia sulcate (Born, 1778) の分布と生 息環境との関係を考察した.また,フトヘナタリ, ウミニナ,カワアイ,ヘナタリ,コゲツノブエガ イ Cerithium coralium (Kiener, 1834) の 5 種の垂直 分布に関して大滝(2001)によって報告された. サイズ分布の季節変動に関しては,愛宕川の河口 干潟において若松・冨山(2000),武内・冨山(2005) によって報告されているが,稚貝が新規加入する 時期の特定が不十分で,新規加入が見られる年と そうでない年があるとされている.愛宕川河口域 に広がる干潟において,ヘナタリをはじめとする 巻貝類のサイズ頻度分布の季節変化に関しては, 若松・冨山(2000),真木ほか(2002),武内・冨 山(2005),中島・冨山(2007)などによって報 告されている.また,渡部(1995)は岡山県笠原 市の潮間帯における本種の産卵様式について報告 している.しかし,ヘナタリの殻形態の比較につ いての研究は,あまり数は多くない.本研究では, 鹿児島県鹿児島市喜入町愛宕川支流河口干潟 (31°23′N, 130°33′E)におけるヘナタリの殻形態 を月ごとに比較し、殻形態の差異を調べた.殻の 計測は Urabe (1998) や今村(2016)で用いられた Urabe 式,Kameda et al. (2007) や中島(2009)で 用いられた Kameda 式,Tomiyama (1984) で用い られた Tomiyama 式の 3 つの計測方法を用いた. また,Tomiyama (1984) や君付(2018)で用いら れた距離である,ユークリッド距離とマハラノビ ス距離の 2 種類を使用してクラスター分析を行っ た.各計測方法 3 種類と各距離の 2 種類を組み合 わせ,計 6 種類のデンドログラムを作りそれぞれ 比較を行なった.