Abstract / Introduction / Summary:
ハゼ科ミミズハゼ属Luciogobius Gill, 1859は,体が前後方向に著しく延長し,それに伴い脊椎骨数が多いこと,体が無鱗であること,および第1背鰭とその担鰭骨を欠くことなどの形態的特徴をもつ間隙環境に適応したハゼ科魚類である(Yamada et al., 2009;渋川ほか,2019).本属魚類は,日本を中心とした東アジアから16有効種が知られているが(渋川ほか,2019;Ikeda et al., 2019),近年では藍澤(2006),Maeda et al. (2008),Yamada et al. (2009),および渋川ほか(2019)などの報告において本属に多くの未記載種が含まれることが示唆されている. 著者らは鹿児島県のミミズハゼ属魚類相について調査をおこなっており,その過程にて鹿児島湾北西部(鹿児島市吉野町から姶良市脇元)の転石海岸からキマイラミミズハゼLuciogobius sp. 1 sensu Shibukawa et al., 2019,ヤリミミズハゼL. platycephalus Shiogaki and Doutsu, 1976,およびナガミミズハゼL. elongatus Regan, 1905の3種を採集した.これらのミミズハゼ属魚類は鹿児島県本土からの初めての記録であり,特にキマイラミミズハゼはこれまで静岡県から得られた2標本のみしか知られておらず(渋川ほか,2019),鹿児島県から得られた本種の標本は2例目かつ分布の南限記録となる.これらの記録は,本属魚類の分布および生態を明らかにする上で有益であり,鹿児島県の生物多様性を理解する上で重要と考えられるため,ここに報告する.