Abstract / Introduction / Summary:
ハゼ科ミミズハゼ属Luciogobiusの1種であるイドミミズハゼLuciogobius pallidus Regan, 1940は,河川感潮域や地下水の流れ出る海岸の砂礫間や転石下などの生息場所から採集されており(吉田・道津,2006;渋川,2019),本属魚類の中でも伏流水の存在する特異な環境に生息する.本種は水質汚濁と河床機能の変化に弱く(遠藤,2018),環境省レッドリスト2019では準絶滅危惧(環境省,2019),鹿児島県では絶滅危惧1A類(米沢・四宮,2016)に指定される希少なハゼ科魚類である. 2019年4月に鹿児島湾奥部にある湧水が豊富な河口干潟の転石下から1個体のイドミミズハゼが採集された.鹿児島県におけるイドミミズハゼの記録は東シナ海側の川内川と奄美大島からのものに限られ(米沢・四宮,2016),鹿児島湾における記録はない.この個体はイドミミズハゼの鹿児島湾における初記録であり,本種の分布情報の蓄積は,保護対策の検討などに際して有益であるためここに報告する.