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九州沿岸初記録のマンジュウダイ科魚類ミカヅキツバメウオの記録

畑 晴陵・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

ツバメウオ属魚類Plataxは日本国内からミカヅキツバメウオPlatax boersii Bleeker, 1853,ナンヨウツバメウオPlatax orbicularis (Forsskål, 1775),アカククリPlatax pinnatus (Linnaeus, 1758),およびツバメウオPlatax teira (Forsskål, 1775)の4種が報告されており(岸本ほか,1988;林・萩原,2013),鹿児島県内においては全種が標本に基づき確認されている(西,2014; Motomura, 2017;木村ほか,2017;岩坪,2017;小枝,2018; Nakae et al., 2018;栗岩,2018).本属魚類の多くは沖縄県において食用となるほか(岸本,1997),幼魚は成魚と大きく形態が異なることでも知られる.アカククリの幼魚の体は黒色を呈し,外縁が鮮橙色に縁取られることから有毒のヒラムシ類やウミウシ類に,ナンヨウツバメウオの幼魚は体が一様に茶色を呈することから,枯葉にそれぞれ擬態すると考えられている(河野,1982;岸本,1997;吉野,2008;西,2014;波戸岡,2018).幼魚の変わった外見や,多くの種がひじょうに人に慣れやすく,飼育しやすいことから観賞魚として扱われる種も多い(岸本,1997;小枝,2018;公益財団法人鹿児島市水族館公社,2018). 一方,ミカヅキツバメウオは神経質で人に慣れにくく,擬態の有無も不明であり,生態等に不明な点の多い種として知られる(岸本,1997; Heemstra, 2001).本種の日本国内における報告例は少なく,鹿児島県内における記録も大隅諸島からのものに限られていた(鏑木,2016; Motomura and Harazaki, 2017;木村ほか,2017).2018年9月11日,大隅半島東岸に位置する内之浦湾において,1個体のミカヅキツバメウオが採集された.本標本は本種の九州沿岸における初めての記録となるため,ここに報告する.