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鹿児島湾におけるウミニナ Batillaria multiformis 集団のサイズ頻度分布季節変動

吉田健一・冨山清升

Abstract / Introduction / Summary:

鹿児島県喜入町を流れる愛宕川の河口干潟に は,上流部にメヒルギ(Kandelia candel)やハマ ボウ(Hibiscus hamabo)からなるマングローブ林 が 広 が っ て お り, そ の 周 辺 に は ウ ミ ニ ナ Batillaria multiformis (Lischke), カ ワ ア イ Cerithideopsilla djadjariensis (K.martin),ヘナタリ Cerithideopsilla cingulata (Gmelin),フトヘナタリ Cerithidea rhizophorarum (A.Adams) の4種の巻貝 が生息している.これまでウミニナについては, 発生様式,分布については研究されてきたが,新 規加入時期などの生活史についてはあまり研究さ れていない.本研究ではウミニナの生活史を明ら かにする目的の一つとして,より広範囲な地域で 調査した. 調査は 2002 年 2 月から 2003 年 1 月の期間に 毎月 1 回,大潮の日の干潮時にコドラート内の砂 泥を集めて,2 mm メッシュのふるい内で洗った ものを持ち帰った.計測はサンプルから肉眼で個 体を取り出し,種毎に分類し,幼貝は顕微鏡を利 用して同定した.ウミニナは殻高をノギスで 0.1 mm 単位で計測して記録した. その結果,各調査区の間で新規加入の時期に 差があることが分かった.上流部から下流部に行 くに従って,加入時期が 1 ヶ月ほど早まっていっ た.また,殻高サイズ頻度分布においても下流部 のほうが上流部に比べ大きいサイズピークを示し ていた.個体数の季節的変動は,全調査区におい て,春にピークとなり,夏にかけて減少し再び秋 に向けて増加していることが分かった.これは, 春には生殖活動のために高密度になるためであ り,秋には幼貝と中型個体の増加のためだと考え られる.