Abstract / Introduction / Summary:
貝類の成長は栄養摂取による軟体部の成長が 先で,貝殻の成長はそれに伴って起こる.貝殻は 硬く計測が容易なこと,成長線により成長の時間 経過記録を保っていることから,これまでにも海 産貝類学(二枚貝類の貝殻成長線分析)や考古学 (遺跡出土貝類の貝殻成長線分析)の観点から貝 殻成長線分析の研究はなされてきた(小池,1986 等).貝殻には様々な成長障害(ディスターバンス) で成長線が記録される.成長の開始点が殻頂,成 長の終了点が殻口・腹縁であり,貝殻に記録され た成長の跡として内部成長は重要視されている. しかし今日まで,陸産巻貝種における貝殻成長線 分析の研究は前例がない. 本 研 究 で は, ヤ マ タ ニ シ(Cyclophorus herklotsi)・ ヤ マ ク ル マ ガ イ(Spirostoma japonicum)・ ア ズ キ ガ イ(Pupinella (Pupinopsis) rufa)の 3 種の陸産巻貝種において,貝殻成長線 分析が行えないかを検討した.主要な研究目的は 陸産巻貝種貝殻成長線分析方法の確立だが,採集 したサンプルは内部成長線・殻高・殻幅を測定し 頻度分布をヒストグラムで表し,散布図で内部成 長線と殻サイズの関係を表した.またこれまでの 陸産巻貝種の研究では,主にサイズを用いて大体 の年齢を推定していたのだが,この推定方法が正 しいのかを内部成長線と殻サイズにおいての相関 の有無で検討した.