/ 042-043

甑島と奄美大島から得られたキツネブダイHipposcarus longicepsの分布北限記録および性的二型に関する知見

小枝圭太・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

ブ ダ イ 科 Scaridae は 10 属 約 80 種 が 知 ら れ (Bellwood, 1994),そのうち日本近海に 7 属 36 種 が分布している(島田,2013).キツネブダイ属 Hipposcarus に は H. harid (Forsskål, 1775) と キ ツ ネブダイ H. longiceps (Valenciennes, 1840) の 2 種 が含まれ(Bellwood, 1994),このうち後者のみが 日本(沖縄諸島以南の琉球列島)から記録されて いる(島田,2013). 近年,鹿児島県下甑島においてキツネブダイ の雌 1 個体および奄美大島において雌雄 1 個体ず つが採集された.これらの標本は鹿児島県におけ る本種の初めての記録となるとともに,下甑島か ら得られた標本は本種の分布北限を更新する記録 となるため,ここに報告する. ブダイ科魚類の多くの種は,雌性先熟の性転 換をおこない,雌雄によって形態や色彩が異なる ことが知られている(益田ほか,1975;Bellwood, 1994, 2001;Allen and Erdmann, 2012).キツネブ ダイの性的二型については,阿部(1987)が体形 の違いを指摘したほか,岸本(1984, 1997)と三 浦(2012)により雌雄および幼魚の色彩が図示し ている.しかし,これらの違いを標本に基づき比 較した例はない.そこで本報告においてはキツネ ブダイの雌雄の形態と色彩について比較検討をお こなった.