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鹿児島県黒島沖の大陸斜面域から得られた底生魚類およびギンザメ科アカギンザメHydrolagus mitsukuriiの記録

福井美乃・松沼瑞樹・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

東シナ海の魚類相に関する研究は,沖縄舟状 海盆とその周辺海域で採集された魚類を報告した 岡村・北島(1984)や琉球列島周辺の底生魚類を 報告した Shinohara et al. (2005),東シナ海全域と 黄海でみられる主に水産有用種をあつかった山田 ほか(2007)などがある.九州周辺については, 古橋ほか(2010)が長崎県南西沖の東シナ海大陸 棚斜面域から 60 科 127 種の底生魚類を記録した ほ か, 小 沢(1983) が 鹿 児 島 県 枕 崎 沖 の 水 深 300–400 m から得られた 111 種の魚類を報告して いる.九州周辺海域の大陸棚斜面に生息する底生 魚類の記録は少なく,とくに鹿児島県が位置する 九州南西部周辺からの記録は,前述の小沢(1983) に限られる. 2013 年 7 月に鹿児島県上三島の黒島沖(Fig. 1), 水深 300–400 m からクダヒゲエビ類(たかえび) を対象とした底曳網漁によって,18 科 23 種の底 生魚類が採集された.このうち,ギンザメ科のア カギンザメ Hydrolagus mitsukurii (Jordan and Snyder, 1904) は東アジア周辺海域に分布し,日本では本 州沿岸と東シナ海から知られ,東シナ海において は沖縄舟状海盆および九州西部の大陸棚斜面域か ら記録されていた(中坊ほか,2013).鹿児島県 において,本種は小沢(1983)により枕崎沖から 報告されているものの,その標本は現存していな い.また,鹿児島県の軟骨魚類相を網羅的に調査 した山下ほか(2012)は本種を記録していない. そこで,分布情報の蓄積を目的として,黒島沖か ら得られた底生魚類を報告するとともに,アカギ ンザメを標本に基づく鹿児島県からの初記録とし て,詳細に記載し報告する.