Abstract / Introduction / Summary:
トビウオ科 Exocoetidae は日本近海には 7 属 31 種が分布しており(藍澤・土居内,2013),この うち 19 種がハマトビウオ属 Cypselurus に含まれ る( 藍 澤・ 土 居 内,2013). 今 井(1959) は Cypselurus spilonotopterus を標本に基づいて初め て日本から報告した.彼は,天草,屋久島,琉球 列島および国外から採集された体長 8.9–295 mm の複数の標本に基づき本種を記載し,生活史を報 告するとともに,カラストビウオの和名を提唱し た.しかし,吉野ほか(1975)は本種を琉球列島 から報告し,和名チャバネトビウオを提唱した. その後,加藤ほか(2006)は沖ノ鳥島周辺海域で の本種の産卵を報告し,加藤ほか(2008)は小笠 原諸島近海において本種が 3–6 月に産卵を行うこ とを報告した.立石(2010)は屋久島における本 種の出現状況を報告した.また加藤(2011)は小 笠原諸島から本種を報告すると同時に他の小笠原 諸島近海産トビウオ科魚類と本種との簡易識別法 を示した.中村(2014)は与論島から本種 1 個体 (KAUM–I. 55069,体長 250.0 mm)を報告した. 現在,チャバネトビウオは国内において,小 笠原諸島,沖ノ鳥島,天草,および屋久島から琉 球列島に出現するとされている(今井,1959;藍 澤・土居内,2013). 2013 年 10 月 10 日に鹿児島県肝属郡肝付町内 之浦湾で,チャバネトビウオと同定される 1 個体 が採集された.本標本は鹿児島県本土における チャバネトビウオの標本に基づく初めての記録と なるため,ここに報告する.