Abstract / Introduction / Summary:
ニシン科魚類 Clupeidae は世界で 57 属約 188 種 が知られており(Nelson, 2006),日本近海には 11 属 17 種が分布する(青沼・柳下,2013).ヤマト ミズン属 Amblygaster は世界から 3 種が有効種と して認められており(Whitehead, 1985),日本に はそのうちヤマトミズンA.leiogaster (Valenciennes, 1847) とホシヤマトミズン A. sirm (Walbaum, 1792) の 2 種が知られている(青沼・柳下,2013). Kishinouye (1908) は Clupea okinawensis を「 や まとみづん」の和名を付して琉球列島から記載報 告したが,この学名は現在 Amblygaster leiogaster (Valenciennes, 1847) の 新 参 異 名 と さ れ て い る (Wongratana, 1980; Whitehead, 1985; Monroe et al., 1999).その後,吉野(1984)は琉球列島から得 られた体長 15 cm の標本に基づき本種の記載を行 い,鈴木ほか(2000)は兵庫県浜坂町から本種 2 個体(OMNH-P 8286, 12729)を報告し,畑(2014) は与論島から本種 1 個体(KAUM–I. 55088,体長 53.9 mm) を 報 告 し た. ま た Machida and Kuromachi (2003) は,沖縄県名護市および石垣島 から得られた本種に寄生していた二生吸虫類 5 種 の記載を行ったほか,石森ほか(2013)は本種を 沖縄島,慶良間諸島,石垣島から報告するととも にホシヤマトミズンとの比較,マンマルウオノエ Ryukyua globosa の寄生状況を報告した. 松原(1955)は本種の国内における分布域を「鹿 児島,沖縄」とし,益田ほか(1988)は本種の分 布を「鹿児島以南」とした.また,中根ほか(2005) は薩摩半島西岸に位置する吹上浜から本種の幼魚 1 個体(全長 88 mm)を報告したが,鹿児島から の報告はいずれも標本に基づくものであるかは不 明である.また,畑・本村(2011)は鹿児島県南 さつま市から 1 標本(KAUM–I. 151)をヤマトミ ズンとして報告した.しかし,KAUM–I. 151 は 不明瞭ではあるが体側に暗色斑が 1 列に並ぶこ と,第 1 鰓弓下枝の鰓耙数が 40 であること,背 鰭起部が明らかに尾鰭基底よりも吻端に近いこと などから,畑・本村(2011)がヤマトミズンとし て報告した KAUM–I. 151 はホシヤマトミズンの 誤同定であることが明らかとなっている(畑ほか, 2013;石森ほか,2013).したがって,現在,ヤ マトミズンの国内における分布は,琉球列島(青 沼・柳下,2013;畑,2014),兵庫県浜坂町(鈴 木ほか,2000)となっている. 2013 年 3 月 22 日に鹿児島県南さつま市笠沙町 沖でヤマトミズンと同定される 1 個体が定置網に より採集された.本標本は鹿児島県本土における ヤマトミズンの標本に基づく初めての記録となる ため,ここに報告する.