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鹿児島県喜入干潟における海産巻貝ウミニナ Batillaria multiformis (Lischke, 1869)(腹足綱ウミニナ科)の貝殻内部成長線分析

金田竜祐・中島貴幸・片野田裕亮・冨山清升

Abstract / Introduction / Summary:

軟体動物の大部分は移動能力が低く,生息地 の不適環境に耐えて生活する必要がある.そのた め,軟体動物は様々な成長障害(ディスターバン ス)を受けることになり,貝類の成長線はこのディ スターバンスによって殻に記録される.貝類の成 長線として,これまでに年輪,潮汐輪,日輪があ る と い う 報 告 が さ れ て い る(Nakaoka, 1992; Nakaoka & Matsui, 1994).海産貝類のディスター バンスは内的因子として生殖活動や疾病などがあ り(Hancock, 1973; Goshima, 1982),外的因子と し て 海 水 温 度, 潮 汐, 塩 分 濃 度 な ど が あ る (Lammens, 1967; Jones et al., 1989; Beukema et al., 1977; Dauvin & Gentil, 1989).成長線分析は,成 長の時間経過記録を保持し,年齢構成や成長パ ターンなどの重要な情報をもたらす研究として, 過去にも海産二枚貝類学や考古学の観点から研究 はなされてきた(小池,1986;松井,2003).し かし,巻貝類の貝殻内部成長線分析は遅れている のが現状である.近年,橋野(2009)や平田(2012), 吉住(2011)によって,鹿児島湾内産の巻貝類の 貝殻内部成長線分析の研究が試みられている. 本研究の目的として,鹿児島県喜入干潟のウ ミニナを用いて,貝殻内部成長線の分析法の確立 を試みた.貝殻内部成長線分析は種によって分析 方法の詳細が異なるため,ウミニナにおいての殻 の 研 磨 処 理 角 度 や 研 磨 場 所, 染 色 方 法, ETCHING,SUMP 法などの分析方法確立を試み た.貝殻内部成長線数と殻サイズの相関関係を調 査し,喜入干潟におけるウミニナの成長パターン の解明を試みた.1 年を通しての,各月の貝殻内 部成長線形成パターンを観察・比較することで内 部成長線の形成時期と形成要因の解明を試みた.