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新種発見から半世紀ぶりに確認されたカタミノフクロツナギ Chamaebotrys lomentariae (Tanaka et Nozawa) Huisman (紅色植物門マサゴシバリ目)

木森万奈生・天野裕平・寺田竜太

Abstract / Introduction / Summary:

鹿児島県種子島と馬毛島の周辺は,平坦な海 底が水深 30–60 m にかけて広範囲に広がってい る. 本 海 域 か ら は, シ ン カ イ ユ ナ Chondria mageshimensis Tanaka et Nozawa(紅藻綱イギス目) やゴアンメ Punctaria mageshimensis Tanaka(褐藻 綱ウイキョウモ目)などの固有種が 1960 年代に 新種として多数報告されている(Tanaka 1960, 1963a, b, 1965 等). カタミノフクロツナギ(紅藻綱マサゴシバリ 目 ) は Coelarthrum lomentariae Tanaka et Nozawa として,鹿児島県馬毛島沖の水深 45 m より原記 載された(Tanaka 1963b).しかし,本種に関す るその後の報告はなく,北海道大学総合研究博物 館(SAP)の基準標本(SAP 052169)を除き,国 内外の主要海藻標本庫に標本が収蔵されていな かった.本種は,1)体が直立すること,2)体の 各部が付着しないこと,の 2 点でスジコノリ Chamaebotrys boergesenii (Weber-van Bosse) Huisman と区別される.Huisman(1996)は,オー ストラリア産フクロツナギ属 Coelarthrum を再検 討した際に本種をスジコノリ属 Chamaebotrys に 移した.しかし,原記載以外に情報がないことか ら,Huisman(1996)や吉田(1998)は種の独立 性について指摘していた. Tanaka(1963b) が 報 告 し た 採 集 地 は, 沖 合 5–10 km 程度の外洋に位置する.沖合であること と,水深が 30 m 以深であることから,SCUBA での調査が不可能である.筆者らは 2007 年以降, Tanaka(1963b)等と同じ方法であるドレッジを 用いた調査を馬毛島沖で開始し,当該海域で報告 された実体不明種の再検討をおこなっている.今 回,本種の生育を半世紀ぶりに確認したことから, 本種の形態についてスジコノリと併せて報告す る.