Abstract / Introduction / Summary:
ベニアミゴロモ Dictyurus purpurascens Bory de Saint-Vincent(紅色植物門,イギス目ダジア科) はインド南東部 Tamil Nadu 州の Cape Comorin で 採集された標本に基づいて原記載された(Bory, 1834; Silva et al., 1996; 吉田 , 1998).本種はイン ドやスリランカ,タンザニアなどのインド洋熱帯 域に広く分布すると共に,ミクロネシアやフィ ジー,ニュージーランド,中国(南沙諸島,西沙 諸島)などの太平洋西部からも報告されている (Børgesen, 1945; Chang and Xia, 1978; Lewis, 1984; Silva et al., 1996; Phillips, 1997, 2002; Zheng, et al., 2001; Oliveira et al., 2005; Coppejans et al., 2009). 日本では,Tanaka (1963) が鹿児島県大島郡龍 郷町(奄美大島)の水深 40 m で採集された標本 を日本新産種として報告した.しかし,日本産種 に関するその後の報告はなく,国立科学博物館 (TNS)や北海道大学総合研究博物館(SAP),九 州大学農学部海藻標本庫などの国内主要海藻標本 庫にも標本は収蔵されていなかった. 筆者らのグループは,九州南部および南西諸 島の海藻相調査を 2001 年以降実施しており,ホ ソカバノリ Gracilaria yamamotoi Zhang et Xia やヒ メ ク ビ レ オ ゴ ノ リ Gracilaria articulata Chang et Xia などの日本新産種を報告すると共に,原記載・ 初記録以降に報告のない実体不明種の生育を確認 してきた(Terada and Ueno, 2004; Terada and Shi- mada, 2005).今回,徳之島でベニアミゴロモを 2008 年 12 月に採取し,本邦における生育を 48 年ぶりに確認したことから,ここに報告する.