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鹿児島県における絶滅危惧種クボハゼ Gymnogobius scrobiculatus(ハゼ科ウキゴリ属)の記録

松沼瑞樹・荻原豪太・目黒昌利・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

ハゼ科ウキゴリ属 (Gobiidae: Gymnogobius) 魚類 は 13 種が有効種と認められ,その全てと複数の 未記載種が日本に分布する(Akihito et al., 2002; Stevenson, 2002;鈴木・渋川,2004).そのうち, クボハゼ G. scrobiculatus (Takagi, 1957) は和歌山 県から宮崎県にかけての太平洋,福井県から鹿児 島県にかけての日本海と東シナ海,および兵庫県 から大分県にかけての瀬戸内海に面した地域にの み分布する日本固有種で,良好な環境の河口干潟 に生息し河口域周辺でその一生を終える(鈴木, 2003).近年,生息環境の悪化などによって本種 の生息個体数は減少しており,環境省レッドリス トでは絶滅危惧 IB 類に,鹿児島県レッドデータ ブックでは絶滅危惧 I 類に指定されている(岸野, 2003;鈴木,2003).鹿児島県における本種の分 布は少なく,これまでに県北部の高尾野川から 1 個体の採集記録があるのみである(岸野,2003). 2007 年に行った鹿児島県の魚類相調査で,熊 本県との県境に位置する針原川(図 1),および 薩摩半島東側の鈴川からクボハゼが各 1 個体ずつ 採集された.針原川と鈴川は鹿児島県におけるク ボハゼの新産地であり,後者は本種の分布南限に あたる.絶滅が危惧される本種の保護のため,生 息状況や分布についての情報を蓄積することを目 的として詳細な採集記録を報告する.