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桜島袴腰大正溶岩におけるシマベッコウバイの サイズ頻度分布の季節変化とその生活史

黒木理沙・冨山清升

Abstract / Introduction / Summary:

鹿児島県の桜島に位置している袴腰海岸は,桜 島が 1914 年に噴火したときに溶出した溶岩で覆 われている転石海岸である(吉本,2012).この 海岸には複数種の海産肉食性貝類が生息している (伊藤,1999;奥谷,2000).本研究の材料である シマベッコウバイ(Japeuthria cingulata)は潮間 帯 の 岩 礁 に 生 息 す る 巻 貝 で あ る( 波 部 ほ か, 1994, 1996).シマベッコウバイは袴腰海岸で 1 年 を通して安定して存在している種である.また, 貝類の内部成長線からはその種の生活史や生活 環境に関わる重要な生活の痕跡が記録されてい る.ウミニナやイシダタミガイ,ヘナタリなどの 他の海産の巻貝は性成熟に 2 年かかり,成熟後は 殻の成長が止まることが知られている(鎌田, 2000;吉本,2012;柳生,2013).そのため,性 成熟とともに殻の成長が停止するこれらの貝類で は様々な研究が行われてきた.しかし,シマベッ コウバイは成熟後も殻の成長が停止せず,成長し 続けることが分かっている.そのため,シマベッ コウバイの内部成長線の研究も同様にあまり行わ れていない.内部成長線の観察によりシマベッコ ウバイの詳しい生態や年齢が分かるようになれ ば,今後の海産巻貝類の研究において重要な情報 になっていくと考えられる.そこで本研究では, 桜島袴腰海岸の潮間帯に生息するシマベッコウバ イの生活史を明らかにするため,殻高,殻幅のサ イズ頻度分布と殻の内部成長線の観察を行った.