鹿児島県は東西に約 270 km,南北には約 600 km にも及ぶ広大な土地を有し,その中にはおよ そ 30 もの離島が含まれている.これらの離島に は,気候帯が亜熱帯に属しているものもあり,日 本本土とは異なった気候を有している.そのため, それらの地域には,多種多様な生態系が見られ, 生物たちが数多く分布している.本研究の調査地 とした鹿児島市街地には , 多くの公園内や住宅近 くにも自然林が今なお見受けられる地域でもあ る. 多種多様な生態系の中でも陸産貝類は他の動 物群と比較して,移動分散能力が乏しく,安定し た環境でなければ恒常的な繁殖ができないため, 分布が不連続になりやすい.そのため,集団間の 遺伝的交流が少なくなり,局所的な特殊化が起こ りやすくなることから,生物地理学上きわめて有 益な情報を提供してくれるものと期待される(冨 山,1983).さらに,環境の影響を受けやすいと いう生態的特性から,1 種の環境指標としての役 割も果たすことができる.これまで,鹿児島県本 土以外の諸島,トカラ列島地域や口永良部島,三 島村などの離島の多くでは,陸産,海産貝類にお いて比較的多くの分布調査に関する研究が行われ ており(冨山,1983, 1984),その局所の特異性が 注目されているが,それらの地域に比べ鹿児島本 土における詳細な生物地理学的な分布調査はほと んどなされていない. そこで本研究では,薩摩半島の鹿児島市およ び南九州市に焦点を当て,陸産貝類が生息してい ると考えられる 12 地点の公園に限定してサンプ リング調査を行った.調査方法は見つけ取りで行 い,見つけ取りで採取が困難な微小貝に関しては, 調査地点の土壌を採取し,双眼実体顕微鏡により 見つけ取りを行った.また,採取できた陸産貝類 をもとに Simpson の多様度指数,野村・シンプソ ン指数を算出し,調査地の陸産貝類相の特徴や他 の地域との類似点・相違点を明らかにすることを 目的とした.

鹿児島県鹿児島市・南九州市における陸産貝類の分布(古谷圭汰・冨山清升)