テンジクダイ科(Apogonidae)魚類は,主に沿 岸の岩礁域やサンゴ礁域に生息する小型の魚類 で,基本的に背鰭が通常 2 基あり,眼と口が大き く,体の一部に発光器をもつものもいる.活動は 種によって昼夜の区別がある.また,雄の親魚は 卵塊を口内保育することが知られている(林, 1993;馬渕・吉田,2018). スカシテンジクダイ属魚類は,生時は体が半 透明のやや細身の体形の小型のテンジクダイ科魚 類 で 日 本 に は 3 種 が 分 布 す る(Yoshida et al., 2019;本村,2020).このうち,ソウリュウスカ シテンジクダイ Rhabdamia spilota Allen and Kuiter, 1994 は Yoshida and Motomura(2018)により初め て日本から報告され,これまでに国内では宮崎県 の門川町,鹿児島県の肝付町内之浦湾(大隅半島 東岸)と種子島からのみ記録されていた(Yoshida and Motomura, 2018;本村,2020). また,カクレテンジクダイ属のマダラテンジ ク ダ イ Apogonichthyoides umbratilis Fraser and Allen, 2010 は,最大体長が 5 cm 程度の小型のテ ンジクダイ科魚類で,主に水深 20–60 m のガレ場 やサンゴ礁,岩場の割れ目などに生息し,昼間は 物陰に隠れており夜間に活動する(平田ほか, 2010;Allen and Erdmann, 2012; 吉 田・ 本 村, 2016).国内においてマダラテンジクダイは鹿児 島県,愛媛県および高知県から記録されていた(吉 田・本村,2016). 2020 年 2–3 月に和歌山県の串本漁港において, 定置網により漁獲される魚類を調査した結果,ソ ウリュウスカシテンジクダイ(20 個体)とマダ ラテンジクダイ(1 個体)が採集された.上記の 通り,これら 2 種は和歌山県から記録が無かった ため,標本に基づく同県からの初めての記録を報 告する.

和歌山県串本町からのソウリュウスカシテンジクダイと マダラテンジクダイの記録(松沼瑞樹)