/ 046-105

トカラ列島初記録のオオクチイワシの成魚とシロハナハダカ(ハダカイワシ科)

中川龍一・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

ハダカイワシ科Myctophidaeは世界から少なくとも33属248種が知られており,日本国内からはこのうち23属87種が知られている(中坊,2018).2019年にトカラ列島平島において4個体のハダカイワシ科魚類が採集され,これらのうち1標本はシロハナハダカDiaphus perspicillatus (Ogilby, 1898)に,3標本はオオクチイワシNotoscopelus japonicus (Tanaka, 1908)に同定された.シロハナハダカは日本国内において東北地方から紀伊半島にかけての本州太平洋沖,八重山諸島,および沖ノ鳥島からのみ記録されており(藤井,1984;久保田ほか,1989, 1991; Miya et al., 1996; Shinohara and Matsuura, 1997; Suzuki et al., 2005; Balanov et al., 2009; Shinohara et al., 2009;中坊・甲斐,2013),記載標本はトカラ列島からの初記録となる.また,オオクチイワシは仔魚がトカラ列島近海で記録されているものの(Sassa et al., 2004),成魚は国内においては北海道から土佐湾にかけての太平洋岸,小笠原諸島,および島根県からのみ記録されている(Tanaka, 1908;黒田,1951; Kamohara, 1964; Bekker, 1967;藤井・上野,1976;藤井,1984;久保田ほか,1989; Shinohara and Matsuura, 1997;鈴木・片岡,1997;山田・工藤,1998;小林ほか,1999; Shinohara et al., 2001, 2009, 2014; Watanabe et al., 2001; Uchikawa et al., 2002;塩垣ほか,2004; Senou et al., 2006; Balanov et al., 2009;中坊・甲斐,2013;河野ほか,2014;後藤ほか,2016)ことから,記載標本は琉球列島からの成魚の初記録となる.したがって,両種をここに報告する.