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トカラ列島初記録のホウキハタとカケハシハタ(スズキ目ハタ科)

畑 晴陵・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

ホウキハタEpinephelus morrhua (Valenciennes, 1833)とカケハシハタEpinephelus radiatus (Day, 1868)は,ともにインド・太平洋に広く分布するハタ科魚類である(Randall and Heemstra, 1991; Heemstra and Randall, 1993, 1999;瀬能,2013).これら2種を含むハタ科魚類各種の分属に関しては見解が統一されておらず,分子系統解析に基づくハタ科魚類各種の帰属の再検討をおこなったCraig and Hastings (2007)とMa and Craig (2018)は,ホウキハタとカケハシハタの2種を含むハタ科魚類12種をMycteropercaに含めるとした.しかし,上記の研究は分子系統解析にのみ基づいており,Mycteropercaを支持する形態形質が見いだされていないことから,現在のところ,上記12種はいずれもEpinephelusに帰属されることが一般的である(Parenti and Randall, 2020). これら2種は南日本広域から記録されており,琉球列島においても散発的に記録されていたが(瀬能,2013),トカラ列島からの記録はなかった.2015年7月10日,トカラ列島口之島北方において漁獲されたホウキハタとカケハシハタが1個体ずつ鹿児島市中央卸売市場魚類市場に水揚げされた.これらは2種のトカラ列島における標本に基づく初めての記録となるため,ここに報告する.