/ 046-102

鹿児島県薩摩半島西岸から得られた国内2例目のカガヤキミゾイサキ,および過去20年間に同海域から新種・日本初記録種として記録された魚類リスト

藤原恭司・伊東正英・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

イサキ科ミゾイサキ属Pomadasys Lacepède, 1802は背鰭起部に前向棘を欠くこと,下顎腹面の先端に2つの小孔をもち,ヒゲを欠くこと,および下顎正中線上に細長い溝をもつことによって特徴づけられ(McKay, 2001;島田,2013),国内からはホシミゾイサキP. argenteus (Forsskål, 1775),マダラミゾイサキP. maculatus (Bloch, 1793),およびスジミゾイサキP. quadrilineatus Shen and Lin, 1984の3種が分布するとされていた(島田,2013).近年,国内における本属魚類の4種目となるP. kaakan (Cuvier in Cuvier and Valenciennes, 1830)がHata et al. (2015)によって鹿児島県薩摩半島西岸から得られた1標本に基づき報告され,新標準和名カガヤキミゾイサキが提唱された.国内から採集された本種の標本は,長らくHata et al. (2015)の1個体に限られていたが,2020年4月24日に同海域から国内2個体目となるカガヤキミゾイサキが採集された. 本種が採集された薩摩半島西岸は,近年の魚類相調査によって飛躍的に新知見が蓄積されており,他にも多くの新種・日本初記録種が報告されている.加えて,それらの中には同海域における出現を黒潮と関連させ考察を行っている報告も多数あり[例えば,瀬能ほか(2013),藤原ほか(2017)など],南日本における魚類相の形成を考える際にひじょうに重要な海域である.したがって,国内2個体目となるカガヤキミゾイサキをここに報告するとともに,本研究では薩摩半島西岸における近年の魚類相調査で得られた知見の総括として,過去20年間に同海域から新種・日本初記録種として記録された魚類のリストを作成した.