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遠州灘から得られたベニマトウダイの記録と本種の成長変化に関する新知見

手良村知功・藤川大学・和田英敏

Abstract / Introduction / Summary:

ベニマトウダイ科ベニマトウダイ属Parazen Kamohara, 1935は全世界からベニマトウダイParazen pacificus Kamohara, 1935のみが知られており(Fricke et al., 2020),深海性魚類において唯一口腔内で卵塊を保育する生態をもつ(Singer et al., 2020).本種は西大西洋,インド・西太平洋,および中央太平洋の温帯から熱帯の深海域に広く分布し(Heemstra, 2000, 2003;Hutchins, 2001;Moore et al., 2003;中坊・甲斐,2013),国内では黒潮流域にあたる房総半島東岸から九州南岸にかけての太平洋沿岸,薩摩半島南西沖,屋久島を含む琉球列島,東シナ海,および九州―パラオ海嶺から記録されている(Ozawa, 1983;Shinohara et al., 2005;Motomura et al., 2010;中坊・甲斐,2013). 静岡県沖遠州灘で操業する底曳網漁業によって4個体(標準体長80.3–128.7 mm)のベニマトウダイが採集された.これらの標本は静岡県沖遠州灘における標本に基づく初記録となる.また観察標本において成長段階による体型と色彩の変化が認められたため,併せて報告を行う.