イシダタミ Monodonta labio confuse は,日本に おいては北海道以南に分布している転石海岸の潮 間帯に多く生息する海産巻貝である.本種の生活 史や生態に関する研究例は多いが,本種の成長線 を用いた研究例は少ない.橋野(2010)は,細か な内部成長線も含めたすべての内部成長線を数え るといった内容の研究を行った.本研究では,そ の中でも太い内部成長線(年輪)を数えることで, より詳細な生活史や齢の調査が可能であるかを検 討した.同時に採集した殻高サイズを測った.サ ンプルは,鹿児島市桜島横山町の袴腰海岸の潮間 帯で,月に 1 回 2007 年 7 月から 2009 年 10 月の 期間に集めたものを使用した.観察しやすいよう に貝を処理した後,殻をグラインダーにかけて 削った.削った断面には内部成長線が観察できる. デジタル顕微鏡を用いて,175 倍で殻頂を中心に 内部成長線を撮影して記録した.殻の断面に見ら れる縞状の太い内部成長線(年輪)のみを数えた. x 軸に殻高,y 軸に内部成長線数の散布図を作成 した.内部成長線と殻高の相関は,殻高 10 mm 未満の範囲が一番大きい.10 mm を境に相関係 数の値は小さくなっていった.一定のサイズまで は本数と殻高の相関があるといえ,殻高サイズが 一定以上のサイズを超えると相関がなくなること がわかった.このことから,体サイズを測定して 齢の決定をすることは難しいことがわかった.従 来のサイズ頻度分布を使った齢査定では,新規個 体の進入時期と成長遅滞の期間はわかるが,齢を 決定することはできない,イシダタミの外部成長 線は不明瞭であるが,内部成長線は明瞭なので, 今後の生活史や齢の調査に使えると思われる.

殻の内部成長線解析に基づく 桜島袴腰大正溶岩の潮間帯におけるイシダタミの生活史(奥奈緒美・冨山清升・橋野智子)