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大隅半島東岸の内之浦湾から得られたキビレヒイラギ (スズキ目: ヒイラギ科)

畑 晴陵・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

ヒイラギ科魚類Leiognathidaeは筒状に突出する口をもつことが特徴で(Woodland et al., 2001),日本近海から15種が知られている(瀬能,2013; Miki et al., 2017).宮崎県から大隅半島東岸にかけての九州東岸においては,南日本に広く分布するオキヒイラギEquulites rivulatus (Temminck and Schlegel, 1845)やヒイラギNuchequula nuchalis (Temminck and Schlegel, 1845)が多獲され,食用となるほか,琉球列島において普通種とされるタイワンヒイラギEubleekeria splendens (Cuvier, 1829)やコバンヒイラギGazza minuta (Bloch, 1795),ネッタイヒイラギPhotopectoralis bindus (Valenciennes, 1835)なども散発的に得られ,さらには日本国内の他地域からの記録がほとんどないホソウケグチヒイラギDeveximentum indicum (Monkolprasit, 1973)やカドガワウケグチヒイラギDeveximentum interruptum (Valenciennes, 1839)が記録されるなど,独特かつ,多様性の高いヒイラギ科魚類相を形成することが知られる(藤原・本村,2016; Miki et al., 2017;畑,2018;三木,2019). 内之浦湾の魚類相調査の過程で,2018年12月5日,1個体のキビレヒイラギPhotopectoralis aureus (Abe and Haneda, 1972)が得られた.本種はこれまで日本国内において鹿児島県薩摩半島西岸と沖縄島からのみ記録されており(木村ほか,2006;瀬能,2013;藤原・本村,2016),内之浦湾産の標本は本種の九州太平洋沿岸における初めての記録となると同時に,日本国内における3例目の記録となるため,ここに報告する.