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宝島および奄美群島におけるアオカナヘビTakydromus smaradinus の形態変異の分析

下之段佑一・山根正気・冨山清升

Abstract / Introduction / Summary:

琉球列島に生息するアオカナヘビTakydromus smaradinusを宝島,喜界島,奄美大島,加計呂麻島,請島,与路島,徳之島,沖永良部島において捕獲し,液浸標本をつくり,体色および頭胴長に対する上腕,前腕,大腿,下腿の長さの割合を島ごとに比較した.その結果,奄美大島と沖永良部島では調査期間中1個体のサンプルも得ることができず,この2島においては,生息数が減少してしまっていることが考えられた.それ以外の6つの島においてはサンプルを得ることができ,島ごとのデータを得た.得られたデータを比較したところ,体色については島ごとに緑色個体と緑色/褐色個体,褐色個体の割合はまちまちであったが,その変化の様子に一貫性は見られず,その要因についても手がかりを見つけることはできなかった.また,体長と脚の長さの割合に着目したデータを比較したところ,その割合において他の島と比べて突出した特徴をもつ島はなく,結果それぞれの島に生息するアオカナヘビについて特に他の島の個体群と異なる特徴を持つものはないという結論に達した.本研究を進める過程で,アオカナヘビを含む多くの野生種の両生類,爬虫類がペットとしてインターネット上などで商取引されているという事実もわかった.このことに加え,急速な生息地の破壊も進んでおり今後,琉球列島の両生類,爬虫類の種数,個体数ともにさらに減少することが予想される.そのため,保護に関しては早急な対策が必要であると思われる.