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マングローブ干潟におけるカワアイのサイズ分布の季節変化

今村留美子・冨山清升

Abstract / Introduction / Summary:

鹿児島県喜入町の愛宕川河口干潟には,メヒルギやハマボウからなるマングローブ林が広がっており干潟潮間帯には,ウミニナ科に属するカワアイCerithideopsilla djadjariensis,ウミニナBatillaria multiformis,ヘナタリCerithideopsilla cingulataフトヘナタリCerithidea rhizophorarum,の4種が同所的に群生している.ウミニナ科の貝類は汽水域や塩分の少ない内湾的環境の泥砂底ないし泥質の干潟に生息しており,日本の干潟では最も普通に見られる巻貝である.特徴は,成貝で殻長50mm内外,殻は細長い円錐形である.体層の縦張助が弱く,殻口前端の張り出しが弱い.縦助は上部の螺層で強く,螺助と交差して顆粒状になるが,下方に向かって弱まる.縫合下とその次の螺溝の深さが,同じである.殻色は暗褐色である.本研究では,生態のよく分かっていないカワアイの分布の季節変動を明らかにすることによって,生活史を明らかにすることを目的とした.調査は愛宕川河口の支流にある干潟で毎月1回大潮または中潮の日の干潮時に行った.3つの調査区を60 m間隔で設けた.3つの調査区において,25 cm × 25 cmのコドラートをランダムに置き,コドラート内のカワアイを全て採集した.またカワアイの殻高をノギスを用い,0.1 mm単位で測定した.その結果,上流側は下流側に比べて大型の個体が多く,中流側では小型,大型の個体とサイズの幅が広く見られた.小型の個体は春から夏にかけて下流,中流で見られ,大型の個体は場所や季節に関係なく出現する傾向があることがわかった.殻高頻度分布では,30 mm以上の大型の個体はみられず,月毎にサイズのピークが右の方へ移動していることから,個体群全体として個体が,成長段階にあることが分かった.また月毎の殻高の平均値から,各St.それぞれ大きな変化は見られず,年間を通して一定であった.このことから,2003年1月から2004年1月にかけての期間で,幼貝の定着は無かったことが分かる.またカワアイの寿命は数年であることが判った.