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鹿児島県口永良部島から得られたヤシャベラ Cheilinus fasciatus の分布北限記録

木村祐貴・松尾 怜

Abstract / Introduction / Summary:

ベラ科モチノウオ属 Cheilinus は世界に 8 種が 知られており,そのうち日本にはアカテンモチノ ウオ Cheilinus chlorourus (Bloch, 1791),ヤシャベ ラ Cheilinus fasciatus (Bloch, 1791),ミツボシモチ ノウオ Cheilinus oxycephalus Bleeker, 1853,ミツバ モチノウオ Cheilinus trilobatus Lacepède, 1801,メ ガネモチノウオ Cheilinus undulatus Rüppell, 1835 の 5 種が分布する.ヤシャベラ Cheilinus fasciatus はインド・太平洋の熱帯から亜熱帯域に分布し, 日本国内では琉球列島に分布するとされているが (島田,2013),実際には沖縄諸島,八重山諸島の ように琉球列島の中でも南に位置する島嶼部から の報告がほとんどである(西山・本村,2012;加 藤,2016).また,琉球列島の中 – 北部に位置す る奄美大島(藤山,2004)およびトカラ列島口之 島(坂井ほか,2005)からは生鮮時写真あるいは 水中写真によって生息が報告されているが,標本 に基づく記録はなかった. 2016 年 10 月に広島大学生物生産学部附属練習 船豊潮丸によっておこなわれた鹿児島県口永良部 島での魚類の種多様性調査においてヤシャベラ 1 個体が採集された.本標本は本種の琉球列島最北 部である大隅諸島からの初記録となり,標本に基 づく分布の北限を更新するためここに報告する.