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口永良部島から採集されたクダゴンベの記録

小枝圭太・木村祐貴・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

ゴンベ科 Cirrhitidae は日本近海に 8 属 14 種が 分布している(林・萩原,2013).クダゴンベ属 には Oxycirrhites typus (Bleeker, 1857) の 1 種のみ がしられ,吻が著しく長く管状である,体高が低 い,前鰓蓋骨が強い鋸歯状である,および体側に マ ス 目 模 様 の 斑 紋 が あ る な ど の 特 徴 を も つ (Randall, 1963; 落 合・ 益 田,1974; 林・ 萩 原, 2013).本種は,これまで日本国内において千葉 県館山,伊豆半島大瀬崎,高知県沖ノ島,鹿児島 県硫黄島・屋久島,沖縄県伊江島・与那国島,八 丈島,小笠原諸島から記録されていた(林・萩原, 2013).しかし,本種はやや深場のヤギ類やウミ カラマツ類が生息する環境に限定的に生息するこ と(Donaldson, 1989; Donaldson and Colin, 1989), その美しい色彩と模様からダイバーからの人気が 高く,ダイビング業者が保護していることなどの 理由で採集が困難な場合が多い.そのため,鹿児 島県の硫黄島や屋久島を含む出現記録の多くは, 水中写真に基づいたものであった. 2016 年 8 月におこなわれた鹿児島県口永良部 島の魚類の種多様性調査の一環で,同島沿岸にお いて 1 個体のクダゴンベが採集された.この標本 は鹿児島県における本種の標本に基づく初めての 記録となるため,その形態の詳細を記載し,ここ に報告する.