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標本に基づくヒノマルテンス(ベラ科)の奄美大島と加計呂麻島からの記録,および成長に伴う形態変化に関する知見

福井美乃・小枝圭太・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

ベラ科のヒノマルテンスIniistius twistii (Bleeker, 1856) は,インド・西太平洋に分布し(Allen and Erdmann, 2012; Akhilesh et al., 2012),日本国内で は伊豆諸島,和歌山県沿岸,大隅諸島,沖縄諸島, および八重山諸島から散発的に記録されていた (島田,2013).奄美大島からは藤山(2004)によ り写真に基づいて記録されているのみであった. 2015 年 11 月に奄美大島の名瀬沖で漁獲された 8 個体のヒノマルテンスが採集された.また,国 立科学博物館の魚類標本コレクションからは,奄 美大島に隣接する加計呂麻島から採集された本種 の標本 1 個体が確認された.前者はヒノマルテン スの標本に基づく奄美大島からの初めての記録, 後者は加計呂麻島からの初記録となる.近年,奄 美群島での魚類相調査が盛んに行われており,さ まざまな分類群で日本初記録種や未記載種の発見 が相次いでいる(Matsuura, 2014;本村・松浦, 2014;Suzuki et al., 2015 など).同海域における 魚類の種多様性の解明にむけて,基礎的な分布情 報として寄与するために,奄美大島と加計呂麻島 から得られたヒノマルテンスの標本の形態をここ に詳しく記載し,報告する.