/ 042-010

琉球列島におけるイットウダイ科魚類相

江口慶輔・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

キンメダイ目イットウダイ科魚類は,三大洋 の 熱 帯 か ら 温 帯 域 に 広 く 分 布 す る(Randall, 1998).本科魚類は体が側偏し,比較的硬い鱗に 被われる,目が大きい,腹鰭が胸鰭の下方にあり, 1 棘 5–8 軟条,背鰭の棘部と軟条部の間に欠刻が ある,臀鰭が 4 棘 7–16 軟条,および体色が基本 的に赤色であることによって特徴づけられる(池 田・中坊,2015).本科魚類は,これまで日本か らイットウダイ亜科 Holocentrinae 2 属 19 種,ア カマツカサ亜科 Myripristinae 4 属 21 種が報告さ れており(林,2013),前者は前鰓蓋骨隅角部に 強い棘をもつこと(後者はもたない)と臀鰭軟条 数が 7–10 であること(10 以上)から後者と識別 される(林,2013). 琉球列島は大隅諸島から八重山諸島までの南 北約 1,000 km からなり,同海域には熱帯性・亜 熱帯性から温帯性のさまざまな魚類が分布してお り,同海域が分布の北限あるいは南限となってい る種もが多い.そのため,琉球列島におけるイッ トウダイ科魚類を明らかにすることは,魚類の多 様性を知る上できわめて重要である. イットウダイ科魚類は形態的に酷似した種が 多く,写真のみに基づく正確な種同定を行うこと が困難であり,同定には標本の調査が必要である. しかし,これまで琉球列島における標本に基づい たイットウダイ科魚類の包括的な分布調査は行わ れていない. そこで,本研究では大隅諸島から八重山諸島 までの琉球列島を調査地として,イットウダイ科 魚類相を調査した.886 標本に基づいた正確な種 の同定を行うとともに,今後の分類学的研究に寄 与するために各種の記載を行った.