これまでに桜島では,玉井・冨山(2001), 野中ほか(2002),竹ノ内・冨山(2003)などによっ て特定の地点で特定の種のみに限定した研究は数 多く行われてきた.しかし桜島の周囲の海岸全体 を対象とした,生物群の現況や種多様度について の研究はほとんど行われていない.そこで本研究 では,桜島の海岸 8 地点で調査を行い,桜島にお ける巻貝類の現況を明らかにするとともに,桜島 の潮間帯に生息する巻貝類の多様度と各調査地点 間の類似度を算出し,それを基に桜島の貝類相の 特徴や地点間の相違点を明らかにすることを目的 とした. 調査対象は,桜島の潮間帯に生息する多板綱お よび後鰓亜綱をのぞく腹足綱である.今回の調査 では,桜島の周囲の海岸 8 か所を調査した.2013 年の 4–11 月の大潮と前後日の干潮時に各調査地 点に行き,潮間帯に生息している貝類を見つけ取 りした.採集したサンプルは,表面の汚れを軽く 水で洗い流した後,乾燥機にかけて約 1–2 週間乾 燥した.乾燥が終わったものから順次図鑑などを 用いて同定作業を行った.その後地点ごとに多様 度指数と類似度指数,群分析を行った. 桜島の海岸 8 地点において,調査および同定作 業の結果,多板綱 5 種,腹足綱 65 種の合計 70 種 の貝類がみられた.最も種数が多くみられたのは Pt. F の藤野で 40 種類,最も種数が少なかったの は Pt. H の前崎で 11 種であった.その他の地点で は 26–36 種類の種をみつけることができた. 周囲わずか 50 km ほどの比較的小さな半島であ る桜島には,70 種もの巻貝類が生息しており, その多様性は非常に高いといえる.ヒザラガイ Acanthopleura japonica, ヨ メ ガ カ サ Cellana toreuma, ア マ オ ブ ネ ガ イ Nerita (Theliostyla) albicilla,オオヘビガイ Serpulorbis imbricatus,イ ボニシ Thais (Reishia) clavigera の計 5 種類は,発 見が比較的容易であるということもあるが,今回 の調査ではどの地点でも出現し,その個体数も他 の種よりも多くみられたことから,これらは桜島 における普通種であるといえる. 多くの種をみつけることができた理由として, 転石海岸における地形の複雑性が,物理的ストレ スを軽減し,捕食者からの捕食の危険を減らすこ と が で き る た め だ と 考 え ら れ る(Raffaelli & Hawkins, 1996).さらに,本研究での多様度指数 の結果は,転石海岸に生息する生物群集の多様度 は,その特有の地形の複雑性によって高くなると いう Raffaelli & Hawkins (1996) の記述に沿う結果 となった.

桜島における多板綱および腹足綱の分布と多様性(木村喬祐・若林祐樹・冨山清升)