開聞岳は鹿児島県指宿市の薩摩半島南端に位 置し,標高 924 m(三角点の値は 922.2 m:国土 地理院発行 2 万 5 千分の 1「開聞岳」地形図参照) の円錐形の山で,霧島錦江湾国立公園の区域内に ある(図 1–2).この山の別称は薩摩富士で,三 国名勝図会(五代・橋口,1905)や日本百名山(深 田,1964)に選ばれた景勝地である.開聞岳は平 安時代まで活動していた活火山で,歴史的にも人 と深い関わりをもつ.開聞岳とそれを巡る広い分 野の話題は開聞町郷土誌改訂版(開聞町,1994) に詳しい. 開聞岳の岩石はかんらん石(olivine:オリビン) を含んでおり,開聞岳周辺の海岸にはオリビン・ サンドと呼ばれる海岸砂が分布している.このか んらん石は国内外の地学関係者に知られており, 筆者の一人浦嶋は 1977 年に地質見学地点と決め て来た金沢大学理学部学生を,1987 年に海外研 究者の希望から太平洋縁辺部会議の地質見学で現 地を案内した.また,鹿児島の自然について書か れた出版物(例えば,浦島,1989;大木,2000 など)に掲載されているほか,海岸砂についての 研究報告もある(山元,1954 など).近年は, Web ページでもかんらん石が紹介され,地学関 係者以外にも知られるようになった.このように 開聞岳のかんらん石がよく知られるようになった 一方で,どの研究報告が開聞岳周辺の海岸砂にか んらん石が含まれ,これをオリビン・サンドと報 告したのか,あまり知られていない.また,指宿 市開聞町川尻の海岸砂は調べられているが,その 他の海岸砂についてはあまり詳しく調べられてい ない. ここでは開聞岳のかんらん石の全体像をまと め,かんらん石が火成岩の生成,海岸砂と後背地 (海岸砂の供給源と考えられる地層の分布地)の 地層との関係,海流の堆積物運搬などのほかに, 地球内部や宇宙物質にも関連するものであること について述べたい. なお,オリビン・サンドは,一般にはかんら ん岩の一種であるダナイト(dunite)を破砕・製 粒したものを指し(岡野・平野,2003),工学的 な名称である(長沢・Kužvart,1989). 本文に示した標本と写真は鹿児島大学総合研 究博物館所蔵である.

開聞岳のかんらん石(内村公大・浦嶋幸世)