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新生代九州・沖縄地方産大型脊椎動物化石

仲谷英夫

Abstract / Introduction / Summary:

九州からは中生代を除くと日本最古(約 5000 万年前)の哺乳類化石が産出している.また 120 年近く前に,長崎県北松浦郡江里村(佐々町江里) の古第三紀の地層から発見された,哺乳類の奇蹄 類と思われる足痕化石(篠本,1894)が報告され ている.その後,哺乳類,爬虫類,鳥類など四足 動物(ここでは大型脊椎動物と呼ぶ)の化石が多 数発見され,その産出年代も新生代の古第三紀・ 始新世から第四紀・完新世まで広範な時代にわ たっている.さらに,その種類も豊富で,新生代 の日本列島の生物地理の変遷と成立を考える上 で,九州産の化石は重要なものである(亀井ほか, 1988; など).ただし,古第三紀・暁新世の化石は 九州をはじめ,日本からは見つかっていない. ここでは,新生代の魚類を除く,九州・沖繩 地方産の大型脊椎動物化石を北部九州と南部九 州・沖縄に分け,それぞれの地域から産出した地 質年代順に紹介する.これらの化石や産地に関す る文献は膨大になるが,ここでは主要なものを引 用するにとどめる.さらに詳しい文献を知りたい 場合には仲谷(2010)を参照されたい. なお,新生代の地質年代は,古第三紀の暁新 世(6500 〜 5600 万年前),始新世(5600 〜 3400 万年前),漸新世(3400 〜 2300 万年前),新第三 紀の中新世(2300 〜 530 万年前)と鮮新世(530 〜 260 万年前),第四紀の更新世(260 〜 1 万年前) と完新世(1 万年前〜現在)に区分されている.