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オニバス自生地裸島池の植生

寺田仁志・大屋 哲

Abstract / Introduction / Summary:

オニバス(Euryale ferox)はスイレン科オニバ ス属(世界でも 1 属 1 種)の熱帯性植物でアジア 東部とインドに分布する.日本では本州,四国, 九州の湖沼や河川に生息する.日本の植物の中で 最大の葉をつけ,日本の多様な自然を語るにふさ わしい植物の 1 つであり,かつ希少であるため, 天然記念物として国・県・市町村レベルで保護さ れているところもある.富山県氷見市十二町潟の オニバスは最大のもので葉身の直径が 2.6 m あ り,しかも生育数の多さでは他に例がないという 理由により「十二町潟オニバス発生地」として国 指定天然記念物となっている. 近年,埋め立てや環境の悪化などで自生地は 急速に減少し,現在,自生地は全国で 50 カ所程 度といわれ環境省のレッドデータブックで絶滅危 惧 II 類,鹿児島県では絶滅危惧Ⅰ類に指定され ている. 鹿児島県内でも薩摩川内市水引町の裸島池,同 市寄田町の小比良池,南種子町にある種子島宇宙 センターの人工池,同町浜田の大浦川等が知られ るのみで希少な植物である.このうち,小比良池 は「オニバス自生地」として昭和 30 年 1 月 14 日 に鹿児島県の天然記念物に唯一指定されている. その小比良池も指定当時と環境が変わり,富栄養 化が進んで外来生物のホテイアオイが大繁茂し, 2008 年度もオニバスは数個体しか発生せず,地 元ではボランティアがこれまで数回ホテイアオイ の除去作業を行っている.